遠紫外線が、新型コロナウィルスを死滅させるというニュースがありました。
この遠紫外線というのはなかなか聞き慣れない言葉だと思いますので、その基本情報や安全性について調査しました。
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遠紫外線とは?
2020年5月14日の報道で、遠紫外線が新型コロナウィルスを死滅させるという報道がありました。
【新型コロナ】遠紫外線ランプで死滅か、米大が実験https://t.co/tAdbd61cI5
人には無害だが、ウイルスにとっては有害な「遠紫外線C波」を利用。実験により、表面に付着したウイルスが数分以内に死滅したという。 pic.twitter.com/qj5OcEFY5J
— ライブドアニュース (@livedoornews) May 14, 2020
遠紫外線って聞き慣れないな〜ということで、どういうものかを解説していきます。
まず、遠紫外線というのは何かというと、光の成分のひとつです。
太陽光にはいろんな色が混ざっています。学校の授業でプリズムを使って白い光から虹を作るという実験をしたことがある方もいらっしゃると思いますが、この実験からもわかるように、白い光をいろんな色の光に分解することができます。
上の図のとおり、プリズムに太陽の光を通すと虹色に分けることができます。この現象は光の分散と言います。
このように、プリズムを使えば、太陽の光を分けることができますが、見えている光以外にも成分があって、それが赤外線と紫外線です。
赤外線・紫外線の説明に入る前に、光の正体について簡単に説明します。
目に見えている光は、電磁波という波です。図で書くと以下のような感じになります。
上記の図で、波長と書いているところの違いによって色が決まります。各色の波長は以下の表の通りです。
紫 | 380〜450 nm |
青 | 450〜495 nm |
緑 | 495〜570 nm |
黄 | 570〜590 nm |
橙 | 590〜620 nm |
赤 | 620〜750 nm |
nmはナノメートルと読みます。1メートルの10億分の1。とにかくかなり短いということです。
話を戻します。
目に見える色は、紫から赤までですが、200 nmの波長の光は?とか800 nmの光は?ということになります。
これらの光は存在してますが、目には見えません。
目に見えないので、赤よりも波長が長い光線を「赤外線」(赤の外側だから)、紫よりも波長が短い光線を「紫外線」(紫の外側だから)と表現します。
そして、より赤や紫から離れた波長の光線を、「遠赤外線」「遠紫外線」と表現します。
遠紫外線というのは、紫の光よりもかなり離れた波長の光線のこと。
一般的に殺菌力があるとされている紫外線は、UVC(200〜280 nmの波長の光線)と呼ばれるもので、今回話題の遠紫外線はUVCのことです。
遠紫外線は、もちろん太陽光に含まれていますが、オゾン層で吸収されるため、地表には届きません。しかし、1801年に紫外線が発見され、1901年に紫外線の殺菌効果がわかってから、紫外線発生装置ができ、普通に利用されています。
これまでも、紫外線殺菌装置というのはありますので、今回発表された新型コロナウィルスに対して殺菌作用が確認されたのもうなづけます。
遠紫外線の安全性は
ニュースの中では「人体に無害」とされていますが、もともと紫外線は日焼けの原因であったり、皮膚がんを誘発するという話がありますよね。
本当に安全なのでしょうか?
まず、紫外線はどうやって殺菌効果を示しているかというと、ウィルスの遺伝子に損傷を与えることで死滅させます。
遺伝子は人間にもありますから、人間にも害があるかもしれません。
実は同じような研究を神戸大学がしています(プレスリリース)。
紫外線は、波長によって殺菌効果が増減します。具体的には254 nmで殺菌効果が最大になるとされています。
紫外線は、波長が長めの方が皮膚のより奥深くに到達します。
JIS(日本工業規格)では、220 nmの波長の紫外線から、殺菌効果が認められています。
そして、神戸大学の研究です。
紫外線で気になるのは皮膚がんの発生や白内障の発生です。
神戸大学がマウスで実験した結果によると、220 nmの紫外線をマウスに当てたところ、皮膚がんや白内障は発生しないという結果が得られています。
もともと、皮膚がんなどを発生しやすいと言われているUVB(280〜315nm)では、全てのマウスで皮膚がんが発生しましたので、220nmの紫外線の安全性が確かめられました。
なお、なぜ220nmだと大丈夫なのかというと、220nmの光線は皮膚の表面にしか当たらない一方、UVBは皮膚の奥深くに届いて細胞(遺伝子)を傷つけてしまうからです。
なお、前述のJISのデータによると、220nmの紫外線の殺菌力は、最大とされる254 nmの紫外線の殺菌力の約30%とされていますが、皮膚表面での殺菌力については両者は同等であることが神戸大学で確認されています。
これらのことから、安全で殺菌力があり、しかも新型コロナウィルスにおいても殺菌力が確認されたというところです。
アルコールなどの消毒剤・除菌剤などは材料が必要ですが、紫外線であれば紫外線を発生する蛍光灯のようなものと電気があればOKということで、すぐに普及というわけではないものの、ウィルスに対する新たな武器・対策方法を手に入れた感じですね。
まとめ
今回は、遠紫外線について解説しました。
目に見えないもので、役に立つものっていうのはかなりたくさんあり、その一つだと思います。
日焼けや皮膚がんなどで、紫外線=有害というイメージがありますが、どんどん的を絞っていくことで、安全に使えるものもあるんですね。
科学の力はすごい!
最後までご覧いただきありがとうございました。
2020-05-15