新型コロナウィルスを検出できるの唯一の検査法はPCR法ですので、PCRという単語を目にする機会もしばしばありますよね。
このPCR法とはどういうものなのでしょうか?
PCR法は、簡単にいうと遺伝子を増やす方法です。
あらゆる生物は遺伝子を持っています。遺伝子は生物の設計図で、4つの物質の並び方(配列)によって各生物の特徴が決まっています。
新型コロナウィルスに感染しているかどうかを知りたい時には、新型コロナウィルスにしかない遺伝子を増やし、その遺伝子が増えたことが確認できれば、新型コロナウィルスがいるということが確認できます。
そこで、行うのがPCR法です。
PCR法は、特定の遺伝子の並び方(配列)をコピーし、何度も何度もコピーを繰り返すことで、特定の遺伝子だけをどんどん増やしていきます。
遺伝子は目には見えないので、増やしただけではそこにあるかどうかはわかりませんが、ある配列が増えることがわかるように目印をつけておきます。
遺伝子がある一定の数以上に増えると、その目印が機械で検出できるようになり、新型コロナウィルスがあることが確認できます。
PCR法は、その過程のみであれば2時間程度ですが、PCR法を使うためには、例えば痰などから遺伝子だけを取り出してくる作業が必要です。また、遺伝子を取り出してくる作業をする機関に運ぶことも必要になるので、もろもろの過程を経て検査結果が出るまでには数日程度かかることになります。
2020年2月24日に厚生労働省から発表された指針では、
「設備や人員の制約のため、全ての人にPCR検査をすることはできません。急激な感染拡大に備え、限られたPCR検査の資源を、重症化のおそれがある方の検査のために集中させる必要があると考えます。」
と記載されており、全ての人が望むままに検査が可能という状況にはありません。
まずは、感染しないように手洗い・うがいをこまめにするとともに、感染のリスクを少しでも下げるために、マスクがある場合にはマスクを、ない場合でも咳をする時には咳エチケットを意識して、感染をしない・させないことが重要です。
では、PCR法についてもう少し詳しく見ていきます。
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PCR法とは?
PCR法は、Polymerase Chain Reactionという言葉の頭文字をとっています。
生物は全て遺伝子を持っています。遺伝子は生物の設計図であり、設計図に書いてある基本は生物によって異なっています。
この設計図(遺伝子)は、4つの物質の並び方によって決まっているので、この並び方がわかることで、何の生物かということが特定できます。
ウィルスは目には見えませんので、見た目で「新型コロナウィルス」だということは判断できません(できたら苦労しないけど、見えたら見えたでパニックですね)。
そこで、ウィルスにも絶対にある遺伝子の配列を確認することで、新型コロナウィルスがあるかどうかを確認します。
でも、遺伝子の配列を読むためには、専用の機械(かなり高い)と時間がかかります。
そこで、ある程度簡単に遺伝子を確認するためには、どんどん遺伝子を増やしてわかりやすくする必要があります。この遺伝子を増やす方法として開発されたのがPCR法です。
どうやって遺伝子を増やすの?
遺伝子は増やすことができます。
先ほど、遺伝子は4つの物質の並び方によって決まっていると書きましたが、その並び方をコピーしていくことで、同じウィルスが増えていきます。
遺伝子を増やす時に活躍するのがPolymerase(ポリメラーゼ)というものです。
遺伝子があり、遺伝子を作っている4つの物質があり、ポリメラーゼがあり、環境を整えることで遺伝子は2倍に増えます。
この一連の反応を機械の中で何度も繰り返しているのがPCR法です。
下の図の中で青い方の線がもともとあった遺伝子で、赤い方がPCR法で増幅されたものです。遺伝子は基本的に2本がセットで存在しているので、以下のような示し方になっています。遺伝子=DNAと読み替えてください。
タカラバイオHPより引用
1回増やすと2倍、この2倍になった遺伝子をまた増やすと2倍、また増やせば2倍という要領で、どんどん増やしていきます。
例えば、1つの遺伝子があったとして、PCR法で10回増やせば2倍が10回ということなので、1024個の遺伝子になることになります。
どうやって増やす遺伝子を見つけるの?
では、特定の遺伝子をどうやって見つけて増やすのでしょうか?
新型コロナウィルスの遺伝子では、4つの物質の並び方は当然決まっていますし、検出できるということは、その並び方もわかっているということです。
その並びはとても長く、一番短いウィルスで1,759個、一番長いウィルスで約250,000個の物質が連なっています。
PCR法で、特定の遺伝子を増やしたい時には、25個の並び方を決めることで、新型コロナウィルスの遺伝子にしか反応しない、遺伝子を増やすきっかけをつくることができます。
前述した通り、遺伝子は2本が1セットです。この2本を1本ずつにしてあげます。25個の並び(プライマーといいます)をたくさん入れておくと、1本ずつになった遺伝子にぱっとくっついてくれます。そこで、先ほど説明したポリメラーゼによる増幅を促進させることによって、1本が2本になります(つまり2倍になるということ)。
タカラバイオHPより引用
この25個の並び(プライマー)をきっかけにして遺伝子をどんどん増やしていきます。
ちなみに、25個の並び方だけで本当に特定の遺伝子だけの配列ができるの?と思うかもしれませんが、4つの物質を25個並べる時に何種類の並びができるかを考えると、4の25乗という計算になるので、1,125兆通りの並びができます。
これだけあれば、あるものにしか反応しない配列を組むことができそうですね。
PCRで増やした遺伝子はどうやって検出するの?
遺伝子は増やしただけでは見えませんので、見えるように目印をつけないといけません。
この目印の付け方にはいろいろな方法があるのですが、その1例として遺伝子の中に組み込まれると光を発する物質を、PCR法をする時に加えておくことがあげられます。
PCRによって増えるのは1種類の遺伝子なので、その1種類にしか光る物質は取り込まれませんから、増えた遺伝子の数の指標にすることができます。
下の図の専門用語はさておき、「2本で1組の遺伝子の間に光る物質が挟まれることで光るようになるから、検出することができる」というイメージをわかってもらえれば良いと思います。
タカラバイオHPより引用
ほかにも方法があり、感度(どのくらい増やせば検出できるか?ということ)や簡便さの部分でいろいろと方法がありますが、詳細は専門の書籍などに譲ります。
まとめ
新型コロナウィルスの検査法であるPCR法について簡単に解説しました。
PCR法は、単純に言えば遺伝子を増やす手法のことです。
新型コロナウィルスの遺伝子が増やせるということは、そこに新型コロナウィルスがあったということですよね。
PCR法自体は2時間程度で終わりますが、専門の機関で実施することや、PCR法をやるための準備などにも時間がかかるため、検査結果が得られるまで数日かかるというのが通常です。
厚生労働省の出した指針で「重症化のおそれがある方の検査のために集中させる必要がある」と記載されています。
検査は誰でもやるべきというよりは、うがい・手洗いを主とした感染対策をしっかりと講じることが先決ですね。
なお、2020年4月20日より、新しい検査キットが島津製作所より発売される旨がプレスリリースされています。これまでの検査とどこが変わりそうかは、以下の記事をご参照ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
2020-02-26