新型コロナウィルス感染症に関連して、話題になっているのが「抗体検査」ではないでしょうか?
抗体検査は何を調べているのか?抗体検査でわかることは?抗体検査とPCR検査の違いは?など、気になることがいろいろありますよね。
そこで、抗体検査に関してわかりやすく解説しました!
抗体検査とは? | 過去に新型コロナウィルスに感染したことがあるかどうかがわかる |
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PCR検査との違いは? | PCR検査は今ウィルスを持っているかどうか、抗体検査は持っていたかどうかがわかる |
何を検査する | 指から血を少しだけ採って検査する |
検査時間は | 10分から15分くらい |
以下、詳しく解説します。
Contents
抗体検査は何を調べているの?
抗体検査は、読んで字の如く「抗体」というものが体の中にあるかどうかを調べています。
ということで、まずは「抗体」とは何かということですね。
抗体は、体の中に入ってきた病気の原因(例えばウィルスなど)を退治してくれるもので、体の中にある病気の原因に対する監視員兼兵隊というイメージです。
抗体というのは免疫グロブリンというタンパク質で、特定の物質(ウィルスなど:抗原(こうげん)といいます)にくっつく性質があります。
この抗体がウィルスにくっつくと、ウィルスが壊れたり、血液の中にある掃除屋さんである白血球が、抗体を目印にウィルスを食べたりして、ウィルスを排除したります。
抗体のすごいところは、特定の物質(ウィルスなど)を間違うことがなくバッチリ識別してくれるということです。逆にいうと、だいたい同じというものに対しては反応しません。
ということで、抗体は、通常健康を保つために機能しています。
抗体は、もともと体に備わっているものではなく、1度ウィルスなどに感染した時にできるものです。
つまり、体の中に抗体があるということは、1度その病気にかかったことがあるということを示しています。
抗体検査でわかることは?
抗体検査でわかるのは、先ほどもあったとおり「そのウィルスに感染したことがあるかどうか」です。
抗体検査では、体の中にそのウィルスに対する抗体があるかどうかを確認します。
では、新型コロナウィルスの抗体検査はなんのためにやるのでしょうか?
まず、抗体検査をする目的は、新型コロナウィルスに感染したことのある方がどれくらいいるかを確認することです。
つまり、体の中に記録されているカルテを読み取るようなイメージです。
新型コロナウィルスにかかったことがある場合には、新型コロナウィルスに対する監視員である抗体が存在しますし、かかったことがなければその抗体は体の中にはありません。
新型コロナウィルスに感染した場合でも、熱や咳などの症状がでない場合もありますので、症状がでなければ感染しているかどうかの検査をすることもありません。
どのくらいの方が感染しているか、症状がでる方はどのくらいの割合なのかといった情報を集めるために、抗体検査が役立ちます。
抗体検査とPCR検査の違いは?
次に、抗体検査とPCR検査の違いについて説明します。
PCR検査は、鼻水や痰、唾液などの体液の中に、新型コロナウィルス自体があるかどうかを確認する検査です。つまり、検査で見つけたいものは「新型コロナウィルスそのもの」です。なので、検査に用いるのは体液(鼻水や痰、唾液など)であり、体の外側にでてきているものを検査します。
体液の中に、今現在存在しているウィルスを検出するので、原理から考えると感染したらPCR検査で反応があり、ウィルスがいなくなればPCR検査で陰性になります。
一方、抗体検査では、血液(体の中)にある「新型コロナウィルスにかかった痕跡」を確認します。なので、検査に用いるのは血液です。
抗体は、新型コロナウィルスに感染して、体が「これはいつも自分の中にあるものとは違うぞ!」ということを確認してから、準備をはじめて、作られます。
このため、体の中に抗体が確認できるようになるまでには、感染してから2週間程度かかります。
国立感染症研究所の報告(2020年4月1日の話:こちら)では、新型コロナウィルス感染症が発症してから、1週間以内だと抗体検査で確認できるのは7%ほど、しかし13日以上経過すると90%以上で確認できるとの報告があります。この結果は検体数が30以下と少ないので、確率としての信頼度は高くはありませんが、発症して直後ではなく、13日以上経過しないと、確認できない(確認しにくい)という点だけ見てください。
抗体検査をするためには、少しだけ血液を抜く必要がありますが、指先に細い針を刺すだけです(痛みは少なく、ちょっとチクッとするくらい)。
採取する量が少ないですし、基本的には症状がでていない方が対象(治った方も含む)になるので、医療関係者の方の感染リスクも少ないです。
糖尿病を患っている方は、ご自身で血糖値を測るために、同じように指にちょっと針を刺して血をとるということをされているので、危険性の高い検査でもありません。
アメリカ在住の方で、抗体検査をしたという方の記事を参照すると、検査自体も10〜15分ほどで済むようです。
抗体があるとよいことは?
新型コロナウィルスで同様のことが言えるかどうかは別として、抗体があることで1度かかると2度目の病気の発症がなくなる場合があります。
このお話をおたふく風邪を例にとって説明します。
おたふく風邪は、「ムンプスウィルス」というウィルスが原因となって発症する感染症です。子供の時にかかると症状が比較的軽い場合が多く、大人になってかかると症状が重くなる場合があるということを聞いたことがある方も多いと思います。
また、おたふく風邪に1度かかると2度とかからないという話を聞いたことがあると思います。このため、昔は「おたふく風邪にかかった子がいると、うつしてもらう!」ということもあったそうです。
うつしてもらう目的は、体の中に「ムンプスウィルスに対する抗体」をつくり、「おたふく風邪にならないようにする」ことです。
ムンプスウィルスに感染すると、最初はおたふく風邪にかかってしまいますが、その一方で体の中では、「しんどい症状を起こすムンプスウィルスから身を守らねば!」と、次にムンプスウィルスがきた時に対応するための準備を進めます。この準備の結果、ムンプスウィルスが治った時には、ムンプスウィルスに対する監視員兼兵隊となる抗体が体を巡回するようになります。
こうなってしまえば、次にムンプスウィルスが体に入ってきたときにも、抗体のおかげで体の中に入ってきたムンプスウィルスを退治することができ、「おたふく風邪」にならなくなります。
なお、抗体の説明の際に「おたふく風邪」を例に出しましたが、2020年4月時点で新型コロナウィルスに1度感染すると2度目の感染した時に発症しないという情報はありません。世界保健機関(WHO)も、「抗体があるからといって、再度発症しないという根拠はない」と言ってます。
つまり、「抗体があればもう発症しないから、自粛しなくても大丈夫!」ということではないので、その点はご注意ください。
まとめ
新型コロナウィルスに関する検査のひとつである「抗体検査」について、その概要やPCR検査との違いについて解説しました。
抗体検査では、過去に調べたいウィルスに感染したことがあるかがわかります。
この抗体検査は、基本的にはひとつの抗体検査でひとつのウィルス(など)の感染がわかるというものです。
日本では、2020年4月28日現在、抗体検査ができると言われている検査キットの瀬能確認調査を開始したとの情報があります。
抗体検査が実施できるようになれば、感染の広がりや、新型コロナウィルスに感染しても発症していない方の情報が得られるということもあり、現在の自粛を解除するかどうかなどの判断にも貢献する可能性があります。
アメリカや諸外国では、抗体検査を積極的に実施しているようなので、日本でも同様に、抗体検査が始まる日も近いでしょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
2020-04-28