今回の話題は,安全装備についてです.
安全装備というと,何が思い浮かびますか?基本となるシートベルトから,今や付いていないクルマを探すのが難しい状態になったエアバック,アクセルの踏み間違い防止機能や,衝突軽減ブレーキ,車線逸脱の際の警告など,様々な機能がクルマに,当たり前のように搭載されています.
そこで,各安全装置について,その機能や仕組みを解説していきます.
また,メーカーことの特徴を提示し,クルマ選びの参考にしていただければと思います.
Contents
各種安全装備について
さて,まずは各安全装置についてみていきましょう.
シートベルト
教習所では,「クルマに乗ったらシートベルト!」と習いましたよね.シートベルトはクルマの中でも,最も簡単で最も重要な安全装置です.
では,何のためにシートベルトをするのでしょうか?
クルマは,人が走る速さとは比べものにならないくらい速く走ることができます.走っていれば加速もするし,減速もするし,左右にも曲がります.そして,それらの動作を急にやることもあります.
急加速をすれば体は後ろへ,急ブレーキすれば体は前へ,急カーブすれば体は外側へ引っ張られます.その時に,体を固定するための装置がシートベルトです.体がクルマのシートにある程度固定されていれば,急ブレーキしたとしてもフロントガラスに突っ込むこともありませんし,急カーブで体がドアに激突することもありませんし,なにより操作を継続することができます.
もちろん,クルマの急な操作をしないことが大前提です.
では,シートベルトについてもう少し詳しく.
シートベルトは,ゆっくり引っ張ると普通に長く出てきますが,強い力が加わるとロックされて止まります.このおかげで急な動作の際に体を固定してくれるようになります.
現在乗用車に取り付けられているのは,片方の肩と左右の腰の三点を支える形になっている「三点式シートベルト」です.この三点式シートベルトは,スウェーデンの「ボルボ」というクルマ会社が1959年に発明し,特許を取得しました.現在これだけ普及しているので,「きっとボルボはすごい額の特許料を受け取っていたのだろう!」と思ってしまいますが,そんなことはありません.実は,ボルボはこの3点式シートベルトの特許を無償で公開しました.だから,ボルボは画期的な安全装置によって儲けることもなく,だからこそこれだけ世界中で広まったということになります.
すごいぜ!ボルボ!
締め付けが嫌だからとか,めんどくさいとかいう理由でシートベルトをしない方が,一部いらっしゃいますし,私も若いころはそう思っていましたが,何か起こった時にはすでに遅いので,日頃からシートベルトはしっかりと締めるようにしましょう!
エアバック
続いての安全装置はエアバックです.10年くらい前(?)は,「エアバック標準装備」が売り文句になっていたので,その実装率が高くなかったことが伺えますが,今やエアバックがないクルマ(新車)はない!といっても過言ではありません.それくらい普及した装置ですが,具体的にどのようなものなのでしょうか?
エアバックは,クルマが衝突した時に膨らむ風船のようなものです.
クルマが衝突したことをセンサーが感知すると,着火剤に火がつき,一気に窒素ガスを発生してハンドルで風船がパッと膨らみます.そのあとすぐにしぼんでしまいます.
実はエアバックは万能ではなく,シートベルトをきちんと締めた状態でなければ何の意味もありません.あくまで「致命傷を防ぐための装置」であり,エアバックがついてるから無傷でいられるわけではありません.あくまで衝突した時に乗車している人がフロントガラスやハンドル,ダッシュボードなどに直接ぶつからないようにする装置です.
素材はふわふわしているわけではなく,しっかり頑丈であり,衝突した直後の一瞬で膨らみ,空気によって衝突した時の衝撃を和らげます.当然しぼんだあとはエアバックの機能は何もありませんし,使い捨て状態なので,一回開くと交換です.
私は過去,エアバックを開いたことがあります.いねむり運転でした.ちなみに無傷で大事にはいたりませんでした.当時,ハンドルは変えましたが,助手席はエアバックの袋を撤収したのみにしました.修理費用がもったいなかったのと,自分への戒めで.
その時の感想は,やっぱちゃんと開くんだな〜でした.
衝突軽減ブレーキ
最近のクルマでは,ほとんどの車種で設定されているような気がするくらい普及してきた衝突軽減ブレーキです.
クルマ・人・建物など,あらゆるものに当たりそうになった時に,勝手にブレーキがかかるあれです.CMでやってたやつです.これも必ず止めてくれるというものではなく,衝突する時の衝撃を軽減するものというものですので,過信は禁物です.
この衝突軽減ブレーキは,カメラやレーダー(センサーみたいなもの)で障害物(クルマや壁,人など)を感知すると,運転者に警告音で知らせたり,自動的にブレーキをかけます.
急にブレーキがかかるとびっくりしてしまいますが,クルマで事故を起こすよりは全然いいですね.もちろん,注意して運転するに越したことはありませんが,急な飛び出しとか,ちょっとした脇見,眠気など,ドライブには危険がいっぱいですから,こういう装備で安全レベルを少しでも向上できるのは,技術の進歩の恩恵ですね.
車線逸脱警報
高速道路などで,車線に沿って走っていない場合に警告がでるものです.レーンキープアシストとも呼ばれます.
普通,クルーズコントロール(アクセルとブレーキを操作しなくても勝手に一定速度で走ってくれる機能)と一緒に使用されます.ウインカーを出さずに車線からはみ出ると警告がでます.
居眠り運転防止とか,事故を未然に防ぐためにこの機能がありますが,もちろんこの機能は使わない(作動しない)に越したことはありません.
車線に沿って走っていることをどうやって検知するかというと,カメラに映った画像から白線や点線を認識します.なので,雪道とか白線が見えない状態では作動しません.また,綺麗に白線が書かれているところというのが前提なので,高速道路での使用を想定されています.なお,この機能が使用できるのは65 km/h以上で走行している時です.高速道路ですね.
さて,ここまでで主な機能について解説しました.次に各メーカーのシステムについて書いていきます.
各メーカーの安全機能について
各メーカー独自に名前をつけて,キャッチーに売り込んでいますが,基本的な機能についてはどれも同じです.シートベルトやエアバックは当然同じようなものですし,衝突軽減ブレーキや車線逸脱警報なども,機能としては同じだと思います.しかし,各社そのシステムは少しずつ異なっています.
では,各社どのようなシステムなのかを解説していきます.
トヨタ セーフティーセンス(Toyota Safety Sense)
トヨタは予防安全パッケージを「Toyota Safety Sense」と呼んでいます.
ドライバーに対する警告や自動ブレーキなどににより,事故を未然に防ぎ・被害を軽減することを目指しています.
車線逸脱警報や衝突軽減ブレーキといった機能に加え,標識読み取りディスプレイ,障害物お知らせ機能,後方衝突被害軽減サポート,踏み間違い時サポートブレーキ,パーキングサポートブレーキなどが,個別の機能として搭載されます.
標識読み取りディスプレイは,標識の内容を見落とさないようディスプレイに表示する機能.
障害物お知らせ機能は,レーダーで周囲に障害物を感知すると「ピピー」と警告音が鳴る機能.
後方衝突被害軽減サポートは,障害物お知らせ機能と似ていますが,見えない後方部分にクルマが近づいてきたら警告してくれる機能.
踏み間違い時サポートブレーキは,アクセルとブレーキの踏み間違いで急発進になった時に,急発進しないように制御してくれる機能.
パーキングサポートブレーキは,リアカメラで歩行者を感知すると警告音を出してくれる機能です.
トヨタの場合は,カメラとレーダーの両方で感知するようなシステムです.
予防安全機能評価で高い評価を得ており,2018年の予防安全機能評価のトップはトヨタのアルファード/ヴェルファイア(トヨタで一番大きいミニバン)です.
ホンダ センシング(Honda Sensing)
ホンダの安全運転支援システムの名前は「Honda Sensing」です.
基本的な機能は,トヨタと同じ感じですが,クルマが安全に車線の間を走ることをサポートするシステムが強調されています.クルマや人の接近を知らせる機能は無いようですが,歩行者が道端を歩いていたら,近づき過ぎないように制御する機能がついています.
細かい機能の説明は省きますが,Honda Sensingのサイトは,絵でわかりやすく機能が解説してあります.
こちらは,予防安全性能評価などの結果をサイトに記載はしていませんでした.
なお,ホンダもトヨタと同様に単眼カメラとレーダーで情報を得ています.
日産 インテリジェントモビリティ
日産は,運転支援システムを含めた総称として「インテリジェントモビリティ」と銘打ってアピールしています.
基本的な機能は,トヨタ・ホンダと大きく変わらない印象ですが,先進安全装備のページで「インテリジェントルームミラー」というものが紹介されていました.こちらは,バックカメラで写した画像をリアルタイムでルームミラーに映すものです.荷物や人,クルマのフレームなどでルームミラーだけでは後方の視界が確保できない場合に,直接カメラが見た映像を映すこのシステムはとても便利だと思います.なぜなら,視界を遮るものがないという点はもちろんですが,より後方から見ているので,距離感がより掴みやすくなります.
慣れれば便利な機能です.
と,ここで同じ機能が他のメーカーにないのか?と疑問をもって調べてみると,やっぱりありました.トヨタは「電子インナーミラー」,ホンダは「アドバンスドルームミラー」という名前です.
日産も,単眼カメラとレーダーで情報収集しています.
スバル アイサイト(SUBARU EyeSight)
最後のご紹介はスバルです.
スバルは,2030年までに死亡交通事故ゼロを目指していることを公言しています.
2008年にVer.1がリリースされた「EyeSight」は,改良を重ねて現在Ver.3です.
その特徴は,ステレオカメラを搭載していることです.ステレオカメラは,2台のカメラで画像を取得して,モノを立体的に捉えるというシステムです.まさに人の目と同じ状態.なので,単眼カメラよりも精度よく距離感をつかむことができます.
なお,ステレオカメラのデメリットもあり,カメラの目線に障害物や写りこみがある場合や車高を変更するなどの改造をしてしまうと画像の認識・解析に誤差が生じたり解析できなくなったりするため注意が必要になります.詳しくはこちらに書いてあります.
普通に乗る分には問題ありませんが,クルマを改造しようと思っている方は注意が必要です.
各メーカーのまとめ
ここまで代表的な4つのメーカーについて紹介してきましたが,文字の情報ではあまり各メーカーに差がないということになります.
実際の機能については,解析の方法やこれまでのデータの蓄積などが影響してきます.しかしそれは実際に同じ条件で体験した時にでてくる差と思います.そしてそれはどうやっても不可能な比較になってしまいます.
どのメーカーがオススメということはありませんし,どのメーカーも安全装置(予防安全機能)に対して力をいれてやっていますので,ある程度安心してもいいだろうというのが私見です.
まとめ
さて,今回の記事ではあまりすっきりした感じにならなかったかもしれません.
しかし,どうしても心にとめておいていただきたいのは,上記の機能たちはあくまでドライバーの補助機能であり,過信してはいけないということです.
衝突軽減ブレーキは,あくまで軽減です.クルマは急には止まりません.なので,車間をしっかりととって制限速度を守っている状態が前提になります.それでも,人間なのでミスをします.脇見をしてしまうかもしれませんし,仕事で疲れてぼーっとしてしまうかもしれません.そんな時に安全機能があれば,回避できる確率が上がるというだけです.
昨今,自動運転に関するニュースをみる機会が増えてきましたが,まだ自動ではありません.
人が運転する限りはミスもあるし,危険もあります.そういう前提でクルマを運転しているという意識こそが,安全運転の原点ではないでしょうか?
自分の運転を過信せず,かといって必要以上に不安を感じず,いつでも冷静に運転ができるように,そして,不安に思ってしまうことが多い方は一つの安心感として安全装置を捉え,カーライフを過ごしていただければと切に願う次第です.
2019-06-03