少しマニアックな話ですが,エンジンに興味ありますか?
カタログを見ると,エンジンの大きさとかエンジンのタイプ(ターボとかディーゼルとか)がいろいろ書いてあります.これって何のことかって言われると,よくわからないな〜って思いませんか?
ディーラーとか中古車販売店でクルマを勧められたときに,「このクルマはターボがついてるからいいですよ!」とか「今は,ディーゼルエンジンがいいですよ!」とかって言われる場合があると思いますが,知らないといいのか悪いのかもわかりませんし,そもそも何のことやらって感じになってしまいます.
そこで今回は,エンジンについてお話ししていきたいと思います.
Contents
エンジンについての基本的なお話
エンジンの種類についてお話しする前に,エンジンについて簡単にお話ししていきます.
エンジンは,燃料を燃やしてクルマを動かす力を生み出す,言わばクルマの心臓です.古くは蒸気機関車に始まり,ガソリンエンジンを積んだ自動車が誕生し,今ではガソリンエンジンとモーターの両方を動力としているハイブリッドカーや,モーターで走る電気自動車,水素燃料で電気を作りながら走る燃料電池車などがあります.
蒸気機関車は,ご存知の通り石炭を燃やして走る機関車で,石炭を燃やしてできた熱でお湯を沸かし,その蒸気で力を生み出し,車輪を回転させて走ります.しかしこの場合,大量の水と燃料(石炭など)が必要だし,黒煙モクモク状態になるので,クルマに使うのは難しいし危ないです.
そこで,ガソリンを燃やして力を生み出すガソリンエンジンができました.ガソリンエンジンは蒸気機関に比べてとてもコンパクトになったので,今のような自家用車が実現しました.ガソリンエンジンとは少し違う仕組みで動力を得るディーゼルエンジンも開発されました.
さらに時代は進み,電気を使って動力を得るモーターとエンジンの両方を使うハイブリッドカーができましたし,モーターだけで走る電気自動車や,水素燃料から電気を作ってモーターで走る燃料電池車が登場しました.なお,歴史の観点でいうと,電気自動車はガソリンエンジンの自動車よりも早い1838年にその原型ができたと言われています.
では,エンジンとモーターについて,説明していきます.
エンジンやモーターの仕組みについて
では,エンジンの仕組みについて簡単に触れたいと思います.興味のない方は読み飛ばしてください.
ガソリンエンジンについて
まず最初は,ガソリンエンジンについてです.
だいたいのクルマは,このガソリンエンジンを積んでいます.その名の通り,ガソリンを燃料として使ってクルマを動かすエンジンです.
では,どうやってクルマを動かすための力を生み出しているのでしょう?
さて,ガソリンは爆発しますよね?
例えば,小さい筒の中にガソリンと空気を入れておいて,そこに火花を散らすと筒の中のガソリンが爆発して蓋が吹っ飛びます.この蓋を吹っ飛ばす力を利用してタイヤを動かすための力を作っているのがガソリンエンジンです.
実際のエンジンでは,毎回蓋が吹っ飛んでいるわけではなく,筒の中を蓋が行ったり来たりしています.イメージ画像はWikipediaの右の画像を見てください.
これを高速で繰り返すことで,タイヤを動かしています.
ちなみに,この爆発させるための筒の大きさが排気量というやつで,エンジンの大きさを表しています.2Lエンジンとか,1.5Lエンジンとかって表現されているのが排気量です.この数字が大きいほど筒の大きさや数が多く,燃料はたくさん必要になりますが,大きなパワーを生み出すことができます.
あと余談になりますが,ターボというものについて少しだけお話しします.
エンジンは,燃料と空気を爆発させて力を生み出しますが,その燃料と空気が多いほど強い力を生み出すことができます.ターボというのは,エンジンから出てくる排気ガスを勢いよくエンジンに戻して,爆発する時のエンジンのなかに空気をもっともっとたくさん詰め込んで,さらに強い力を発生させようというものです.
ディーゼルエンジンについて
ディーゼルエンジンも,筒の中で燃料が爆発して蓋が吹っ飛ぶ力を利用していることに変わりはありませんが,大きな違いは爆発のきっかけとして火花を使わないということです.
昔,学生時代に習ったと思いますが,空気をギューっと圧縮すると熱くなります.ボイル・シャルルの法則というやつです.
なぜ空気を圧縮すると熱くなるかについては,そういうものだと思っていただくとして,この空気を圧縮した状態で,燃料を霧にして噴射すると,空気を圧縮した熱によって燃料が爆発して,力を生み出します.
ディーゼルエンジンの燃料は,ガソリンではなく軽油です.なぜ軽油を使うかというと,軽油の方が低い温度で発火するからです.ガソリンの発火温度は約500℃,軽油の場合は約300℃です.
モーターについて
モーターは,磁石の間で電気を流すことで回転力を発生させる装置です.学生のときに習ったフレミングの左手の法則のやつです.
モーターについて詳しく知りたい方はいらっしゃらないかもしれませんが,ごく簡単に説明します.
磁石の間にはN極からS極に向かって磁界というものが生まれます.この磁石の間(つまり磁界の中)で電気を通すと,一定方向に動く力が生まれます.この一定方向に動く力を利用して,回転運動を生み出すのがモーターです.なお,回転運動のためには電気の流れる向きをタイミングよく変える必要があります.
詳しい話は省きますので,磁石と電気の力で回るのがモーターなんだなと思ってください.
なお,燃料電池車もモーターで走りますが,モーターを回すための電気を,水素と酸素を使った化学反応で作ります.そのほか,太陽光発電による電気で走るソーラーカーなんかもありますね.
それぞれの特徴
では,本題である「結局何が違うのか」について,最も一般的なガソリンエンジンを基準にお話ししていきたいと思います.
ディーゼルエンジン
ディーゼルエンジンは,ガソリンエンジンと比べると,力強く壊れにくいことが特徴です.トラックとかバスなどの商業用のクルマでディーゼルエンジンが広く用いられている理由は,荷物や人をたくさん運ぶために力が必要であることと,簡単に壊れてしまっては修理や買い替えにお金がかかってしまうからと言えます.
なお,ここでいう “力” とはトルクのことです.トルクとは,タイヤを回すための力と捉えてください.自転車でいうと,ペダルを踏み込む力の強さのことです.ディーゼルエンジンは,走り出すときに大きな力を得られるという特徴があるので,スムーズに走り出すことができます.
また,ディーゼルエンジンは “軽油” という燃料を使っているので,燃料費が安いです.1Lあたりで20円くらい安いです.さらに言えば,同じ大きさのガソリンエンジンとディーゼルエンジンを比較すると,ディーゼルエンジンの方が燃費がいいです.これは,ディーゼルエンジンの方が燃料のもつエネルギーを効率よく利用できる仕組みだからです.
今度は,あまりよくない面です.
まずは排気ガスの問題.昔のトラックとかって排気ガスが黒くいかにも体に悪そうなイメージを持たれている方もいらっしゃると思いますが,ガソリンエンジンに比べて多くの有害物質を排気ガスに含む傾向にあります.ただ,近年のディーゼルエンジンはクリーンディーゼルとも呼ばれていて,排気ガス中の有害物質がかなり軽減されています.
2つめは,振動とか騒音の問題.ディーゼルエンジンに特徴的な「カラカラ」いうエンジン音や振動があります.近年のモデルではかなり軽減されていますが,気になる方はいらっしゃるかなと思います.
3つめは,ディーゼルエンジンを搭載したクルマは車両価格が高めであるということ.これは,排気ガス中の有害物質を除くための装置にお金がかかるためです.
モーター(電気自動車)
モーターの特徴は,静かであることと排気ガスを出さないことです.静かすぎて歩行者がクルマが近づいていることに気づかないくらいです.あと,排気ガスが出なければ環境にも優しいという話になります.
走る面での特徴は,走り出しから最大のパワーを生むことができることです(ディーゼルエンジンと似ています).さらに,ブレーキをかけたときに発生するエネルギーを電気に変えて再利用するので,効率よくクルマを走らせることができます.
モーターは基本的には良いことが多いのですが,走るために必要な電気を賄うために大きなバッテリー(クルマ用の電池)を必要とします.このバッテリーが結構な曲者.大きいバッテリーは重くて,走るときに大きな足かせになるし,大きいとはいえ使える電気に限りがあるので,走れる距離もガソリン車に比べて短いです.
電気自動車の走れる距離が短いことが,デメリットになる最大の理由は,充電できる施設が少ないからです.ガソリンスタンドのように充電場所がいたるところにあれば,電池切れの心配はかなり少なくなります.最近は増えていますが,それでもどこにあるかパッとわからない.
じゃあ,たくさんつくればいいよね〜って話になるんですが,電気自動車を持っている人はまだまだ少ないので,たくさん作っても商売にならない可能性が高い.家でも充電はできますし.
電気自動車を持っている人が少ないから,充電する場所が増えない.充電する場所が増えないから電気自動車が増えないという負のスパイラル….
そこで,ハイブリッドカーが出てくるわけです.
ハイブリッドカー(ガソリンエンジン+モーター)
ハイブリッドカーは,ガソリンエンジンとモーターを組み合わせることで,エンジンとモーターのいいとこ取りをしようというものです.
先に書いたように,モーターは静かで排気ガスもでないし,走り出しから大きなパワーが得られます.でも,充電しないとずっと走っていられないので,そこの部分をガソリンエンジンで補います.あと,走り出して一定の速度までいけば,ガソリンエンジンが効率よく走れるようになるので,燃費が良くなるという具合です.
ガソリンエンジンが積んであれば,ガソリンさえ入れればどこまででも走れるし,ガソリンスタンドはいたるところにありますので,走れる距離の制限はほとんどなくなります.
ハイブリッドカーは,ガソリンエンジンとモーターの両方でクルマを走らせるので,クルマが複雑になります.複雑なので,整備費用が高くなりがちだし,使っている部品が多いので,故障のリスクは増えます(リスクがガソリンエンジンに比べて高いだけで,故障が多いわけではありません).
燃料電池車
ガソリンエンジンのように,燃料さえ入れればずっと走れるクルマが理想だけど,ガソリンを燃やすと環境によくない….ということで,燃料電池車というのも販売されています.
燃料電池車は,水素と酸素の化学反応で電気を作り,モーターを動かして走ります.電気を作る原料が水素と酸素であるので,化学反応した後には水が出てくるだけですから,ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのように,地球温暖化の原因と言われている二酸化炭素や有害物質を排出することがありません.
燃料電池車に乗っているという一般の方はほぼいないと思いますが,その理由は電気自動車と同じで,水素を補充する場所が圧倒的に少ないからです.また,クルマの値段が高い!まだまだこれからどうなるのかっていう話です.
まとめ
いかがでしたでしょうか?
それぞれ良い面も悪い面もありますので,最後にポイントだけさらっとまとめます.
- ガソリンエンジンは,いろんなクルマに使われているので,選択肢の幅がとっても広い.
- ディーゼルエンジンは,車種が限られるけど,走り出しが力強く燃料にかかる費用が安め
- 電気自動車は,車種が少ないけど,環境にやさしく充電場所が多い都会のチョイ乗り用
- ハイブリッドカーは,エンジンとモータ−のいいとこ取り!
ハイブリッドカー最高!みたいなまとめっぽいですが,それぞれに良い面とイマイチな面を考え併せることで,クルマ選びの参考にしてもらえればと思います.
2019-06-22